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トレンド解説

2024.04.15

【トレンド解説】超入門「 スマートファクトリー 」🏭

【トレンド解説】超入門「 スマートファクトリー 」🏭

はじめに

今回は、
「スマートファクトリー『超』入門」
と題して解説をさせていただきます。

世界中で、
ものづくりのデジタル化や製造業DXが重視され、
取り組みが進んでいる中、
国内でも経済産業省がロードマップを発表するなど、
「スマートファクトリー」が注目されています。

しかし、
Webサイトなどで見られる情報は、
「IoT」や「AI」(人工知能)など、
テクノロジーの話が多く、
「スマートファクトリーが、なぜ今、必要とされているのか?」
「どこを目指せばよいのか?ゴールは何なのか?」といった
本質的なコンテンツは少ないように思います。

そこで、
IT業界出身の私自身、
スマートファクトリーの本質を理解したいという気持ちもあり、
今回の解説を行うことにしました。

皆様の業務にお役に立てれば幸いです。

マジセミ株式会社
代表取締役社長
寺田雄一

参考情報

参考書籍

本解説は、
以下の書籍をベースの参考情報としています。

→Amazon →スマート・ファクトリー 戦略的「工場マネジメント」の処方箋 清威人(著)

<以降、“本書”と記載します>

参考動画

「ものづくり太郎さん」と「天野眞也さん」のYoutube動画も
参考情報としています。

→YouTube →ものづくり太郎チャンネル

→YouTube →AMANO SCOPE 天野眞也

入門解説として編集

本文は、
以上の参考情報をベースとして、
マジセミ株式会社の寺田が行ったウェビナーを基にしており、
解説の要点を編集してまとめたものです。

製造業の危機

スマートファクトリーがなぜ注目されているのか、
その背景を解説します。

この章では6つのポイントについて説明します。

1)「カーボンニュートラル」と「脱炭素」の動き

まず注目すべきは、
「カーボンニュートラル」と「脱炭素」の潮流です。

この動きは新しいものではありませんが、
「改正温室効果ガス排出量制限法」が2024年4月から施行されたことで、
さらに注目が高まっています。

法律では、
「2050年までにカーボンニュートラルを達成する」と明言され、
企業はその進捗状況を公開するよう求められています。

この情報が公開されることで、
「企業が環境に配慮した経営を行っているか」が
評価されるようになっています。

2)省エネの必要性

次に、省エネについてです。

関連する法律が最近改正され、
一定の規模以上の企業は、
エネルギー使用状況を報告する義務があります。

取り組みが不十分であれば、
指導や助言が行われる可能性があります。

3)グローバルにおける資源確保競争

中国やインドをはじめとした新興国の経済成長に伴い、
世界中で資源獲得の競争が激化しています。

米中貿易摩擦 や 台湾問題、
さらには、
新型コロナウイルス や ウクライナ情勢 などが影響して、
「サプライチェーンの安定性」も問題となっています。

4)電気料金の高騰

ウクライナ情勢 や 円安 の影響で、
電気料金が急激に高騰しています。

このような状況は、
企業にとって大きな負担となっています。

5)グローバル競争の激化

国内で製品を開発/販売し、
利益を回収した後に、
海外展開する。

もはや、
このようなビジネスモデルは古くなっており、
現在は「世界同時市場」となっています。

従来ならば、
まずは日本国内で製品を販売し、
その後、
海外に拡大する
という流れが一般的でした。

そうすることで、
国内と海外の双方で
しっかりと利益を回収できました。

しかし、
急速に変化するグローバル市場の状況では、
このアプローチは
もはや成立しないと言えます。

製品のライフサイクルが短縮されているため、
国内市場だけで
長期にわたり
利益を得るのが難しくなっています。

この間に海外からの競合が参入してくると、
従来のビジネスモデルでは利益を確保できません。

この状況は、
「リアルタイムマネジメント能力の必要性」を高めており、
「グローバルサプライチェーン全体での最適化」が
求められています。

現在では、
日本国内だけでなく、
世界中の全ての工場で同時に
「新しい設備と最新の工程」を稼働させる必要があります。

6)「変種変量生産」と「マス・カスタマイゼーション」の需要

最後に、
「種変量生産」と「マス・カスタマイゼーション」について考えます。

BMWの例

これは「ものづくり太郎さん」の動画からですが、
例として、
BMWの車が挙げられています。

この車では、
「外装のカラーオプションが100種類」「内装の選択肢が20種類」から選べる
というカスタマイズが可能で、
「2000種類以上のバリエーション」が生まれます。

この高度なカスタマイズ性が消費者の興味を引き、
製品の市場での成功を支えています。

個別要望に柔軟に応えられる製造体制構築

この「変種変量生産」と「マス・カスタマイゼーション」が今、
製造業で求められています。

日本でもすでに先進的な企業で実践されているケースもありますが、
顧客の個別の要望に柔軟に応えられる製造体制の構築は、
今後の製造業において避けては通れない課題です。

では、どうすればいいのか?

製造業における現在の危機の状況について
説明してきました。

危機の実態が理解できたとして、
次に何をすべきか、
何ができるのか、
という疑問が浮かびます。

この章では、
これらの課題にどのように対処すべきかについて、
焦点を当てます。

工場長への質問

本書では、
著者が工場長に次のような質問をしたそうです。

「CO2の削減のために、電力使用量を30%削減する必要があります。
工場長として、最初にどの問題に取り組みますか?」

残念ながら、
この質問に対する明確な答えを出すことができた工場長は
いなかったそうです。

その理由は、
「どの設備の電力使用量をどれだけ、
どのように削減すれば効果があるのか?」
という具体的な情報を、
工場長が持っていなかったからです。

また、
「製品が生産される過程でのリードタイムはどれくらいか?」
という質問に対しても、
具体的な答えはなかったそうです。

不十分な環境整備

現代の工場は、
多くの課題に直面しています。

情報の整備が十分に行われていないのです。

データ収集や管理が不十分で、
ERP(Enterprise Resource Planning)システムで管理しているデータ と
実際の現場でのデータ には
ギャップが生じています。

データを有効活用できない問題

データの活用にも問題があります。

「データは存在する」ものの、
「その有効な活用方法がわからない」という状況が
多く見られます。

この背景には、
「データ収集が目的を持って行われていない」
あるいは、
「データ間の関連性が正確に分析できていない」
という問題があると考えられます。

「ERP」と「製造管理システム」(MES)や、
さまざまな「ファクトリーオートメーションシステム」(FA)との
データ連携も不足しています。

このような状況が、
「データが存在する」ものの、
「それを有効に活用できていない」という問題を
引き起こしています。

「スマートファクトリー」とは?

製造業における様々な危機の中、
その解決の鍵がスマートファクトリーにある、
というのが本書の主張です。

「スマートファクトリー」の定義(書籍版)

ここではスマートファクトリーの具体的な定義について解説します。

本書では、
スマートファクトリーが、
工場内の全機器を網羅し、
リアルタイムで情報を収集、
それによって、
工場活動を「見える化」すること、
これがスマートファクトリーであると
説明されています。

スマートファクトリーでは、
工場内の全ての機器がネットワークに接続され、
それにより工場全体の活動を一元的に管理し、
最適化するシステムが構築されます。

これにより、
工場全体の活動がリアルタイムで可視化されます。

「スマートファクトリーの定義」(寺田追加版)

私(寺田)は、
この定義に1つ追加したいと考えました。

それは、
スマートファクトリーが
「工場全体、およびグローバルサプライチェーン全体の最適化を実現する」
ということです。

この「全体最適」が
重要なキーワードだと感じています。

単一のラインレベルでの最適化は以前から行われてきましたが、
それを工場全体やグローバルサプライチェーンに拡大する試みは、
まだ十分に進んでいないのが現状です。

全体最適化が可能に

スマートファクトリーの導入により、
工場内の多岐にわたる情報が集約され、
その情報から生産プロセスの間に存在する具体的な因果関係を明確に把握できます。

例えば、
生産効率の低下を引き起こしている具体的な要因がリアルタイムで特定され、
迅速な対策が可能となります。

これによって、
高度な自動化が可能となり、
ロボットやAIを用いた効率化も実現します。

スマートファクトリーの特性を利用することで、
品質管理が強化され、
間接部門を含む全体の運営コストの削減が実現可能です。

さらに、
環境負荷も軽減できるため、
CO2削減や省エネにも貢献します。

最も重要なのは、
「工場全体やグローバルサプライチェーン全体での全体最適」が
可能となる点だと思います。

スマートファクトリーはどのように役立つのか?

この章では、
「スマートファクトリーはどのように役立つのか」について、
解説していきます。

本書では3つのポイントを説明しています。

①リアルタイム性の向上

まず1点目、
スマートファクトリーは「リアルタイム性を向上」させます。

これにより、
例えば工場の異常を素早く察知し、
対処することが可能となります。

②情報共有一元化+可視化

次に2点目、
「情報共有の一元化と可視化」も進展します。

それにより、
各部門やプロセス間で情報が瞬時に共有され、
より高度な分析や最適化が行えます。

③生産プロセスや業務フローの最適化

最後に3点目、
一元化された情報を基に
生産プロセスや業務フローを詳細に分析することで、
効率向上とコスト削減を実現します。

スマートファクトリーの導入により、
既存のシステムは置き換えられることなく
機能が強化されます。

今までできなかった分析が可能に

これにより、
以前は不可能だった「新しい機能や分析手法」が
利用可能になります。

例えば、
「原価の把握」が
より詳細に行えるようになります。

予定原価だけでなく、
「実際に発生する製造コスト」も詳細に追跡し、
分析することが可能です。

また、
時間の概念を加えた
「キャッシュフローの管理」(Jコスト論)も
可能となります。

シミュレーション

さらに、
スマートファクトリーを利用すると、
様々なシミュレーションが行えます。

例えば、
最もコストが低く、
最も効率的な生産計画を立てるだけでなく、
「最も電力消費が少ない または CO2排出が少ない 生産計画」も
シミュレーションできます。

これにより、
環境への影響を最小限に抑えつつ、
効率的な生産活動が可能となります。

デジタルツイン

また、
「デジタルツイン」というテクノロジーも
スマートファクトリーで利用されています。

デジタルツインは、
物理的な工場 や 生産ライン を
デジタル環境でモデル化し、
シミュレーションや予測を行う技術です。

これによって、
「工場全体やサプライチェーン全体」をシミュレーションし、
「生産量」(スループット)「CO2排出量」「電力消費量」などを
予測することができます。

新しい工場を建設する際や、
既存の生産ラインの段取り変更をする際に、
デジタルツインを活用することで、
最初から 最適な設計と運用 が可能になり、
全体としての効率が大幅に向上する可能性があります。

デジタルツイン技術は、
既に現実のものとなっています。

ツール類

ツールも多数提供されており、
「多品種少量生産の段取り効率化」などが
可能になっています。

ダイナミックセル生産

「ダイナミックセル生産」についても
触れたいと思います。

この方式では、
仮想的な生産ラインを
ダイナミックに組み換えることができます。

これにより、
多品種少量生産にも
容易に対応が可能です。

ただし、
作業者のスキルレベルが高くなければならず、
多能工化が必要になる場合もあります。

この問題の解決にも、
スマートファクトリーが役に立ちます。

作業者に対する指示をデジタルディスプレイを通じて提供するなど、
高度な技術を用いたソリューションが実装されています。

さらに、
セル間の物流には無人搬送車が使用され、
セル内ではロボットも活躍します。

デジタルツインによるシミュレーションを用いて、
ライン変更や仕様変更も容易に行えるようになります。

まとめ

「スマートファクトリー」の目標

スマートファクトリーは、
工場内の多様なデバイスやシステムをネットワーク化し、
データを集積することから、
その機能が始まります。

そのデータを元に、
「可視化」「分析」「シミュレーション」を行い、
「改善」「効率化」「変種変量生産の実現」などにつなげていく仕組みのことです。

そして、
これを通じて、
「工場レベル あるいは グローバルレベルでの全体最適化」を実現するのが
スマートファクトリーの目標である
というのが私の理解です。

IoT

「IoT」(Internet of Things)が中心的な役割を果たし、
工場内の機器やプロセスをリアルタイムで連続的に監視し、
データの収集と分析が自動化されます。

加えて、
カメラを活用して作業者の動きを監視することで安全を確保したり、
製品の品質を保つための外観検査を自動化することができます。

また、
センサーやビーコンといった技術も活用されています。

データ可視化

次に、
これらのデータを可視化し、
分析する工程があります。

ここでは、
「ビッグデータ」や「人工知能」(AI)が
非常に有用なツールとなっています。

デジタルツイン

また、
デジタルツインのような
先進的な技術も登場しています。

具体的な改善や効率化の手段として、
「予知保全」や「外観検査」など、
すでに効果が証明されているユースケースが
多く出ています。

スマートグラスやロボットのようなテクノロジーも、
もちろんあります。

ダイナミックセル生産

「ダイナミックセル生産」というコンセプトは、
変種変量生産への対応に重要です。

全体最適化を目指す

これら全てが組み合わさって、
「工場や企業、グローバルレベルでの全体最適化」を
目指すわけです。

以上が、
私がこの解説を通して理解した内容です。

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